『拝啓 滝沢 玲 様

季節は春を跨ぎ、玲の生まれ月が訪れようとしています。そのあとやってくる俺の誕生日をまだ憶えているでしょうか。
堅苦しいかもしれないが、最後まで読んで欲しい。
今年、二十歳になる玲に、すこし早く生まれた身として案ずるならば、これを最後の交流にして欲しい。
もう返事も要らない。
もう、会うこともない。
それだけは覚えていて欲しい。
ささやかなプレゼントをこの手紙と送るから好きなように使って欲しい。捨ててもいい。必要ないならそれも構わないから、一つ玲に頼みがある。

6月4日、その日にこの番号に電話を一本入れて欲しい。
080………




玲、またどこがで会えたら、その時お前の横に知らない男と笑顔のお前がいることを心から願ってる。
辛い時は声が枯れるまで叫べ、そして泣け。そうすればちょっとは楽になるから。

今までありがとう。

香川 涼』