今日も来ない、きみを待ってる。


「煙草、吸いすぎですよ」

私と二人になってから、もう3本目だった。

「そうだっけ」

「肺癌になっちゃいますよ」

「早死にしちゃうね」

彼はそう言って笑う。

「笑い事じゃないですよ」

私は危機感のない彼に対して溜め息をつく。

「別に早死にしたっていいよ。そんなに長く生きたいわけじゃないし」

彼はどこか冷めていて、何かに特別執着したりしない。
危なっかしくて、瞳の奥には深い闇が隠れているように思える。
私と彼の間に見えないラインが引かれているようで、彼の方に一歩踏み出せない。
深く誰かに踏み込まれないようにしている。
過去に何があったのだろう。

「どうしたら、煙草をやめてくれますか」

「そうだな…」

彼は煙草の煙を1度吸ってから答えた。

「本当に大切だと思える人に出会って、その人に"煙草止めて"って言われたらやめるかな」

まだ私と彼が出会ってから3ヶ月。
私を"大切な人"だと思ってもらえるには、どうしたら良いだろう。
今の私と彼の距離では、いつになったって間に引かれているラインは無くせない。
一歩、彼のそばに歩み寄らなければ。