今日も来ない、きみを待ってる。

意地悪を言われることを警戒しながら、私は再び彼のほうをちらっと見る。
煙草を吸いながら、彼は斜め前の席のOLらしき女性達のほうを見ている。

彼はきっと、恋愛経験が豊富だと思う。
直接聞いたことがないからわからないけれど、恋愛経験のない私でもわかる。
ご飯の美味しい店も知っているし、女性に対してどう言えば喜ぶかを知っている。

そんな彼なのに、なんで私のようなただの女子高生と会ってくれているのだろう。
彼ならどんな女性の心も射止められるはずだ。

「このあとさ、夜景でも見に行こうか」

私がミートソースパスタを食べていると、彼は突然そう言った。

「夜景?」

いつもは夜ご飯を食べたら帰るだけだったのに、今日は夜景を見に行こうと誘ってきた。
一体どうしたのだろうと考えても見るけれど、理由がわからない。

「いや?」

私が嫌だと言うはずがないとわかっているはずだが、彼は私に問いかける。

「行きます」

この辺りに夜景が見える場所なんてあっただろうか。
疑問に思いながら私が快諾すると、左手で頬杖をついている彼は笑顔でこちらを見ていた。