笹に願いを

「でもさ、男って元々妊娠も出産もできないだろ?それに俺自身、子ども大好きだから絶対父親になるんだー、みたいな気持ちはそんなになかったし、跡継ぎ残さなきゃいけないような、大それた家柄でもないしな、うちは。だからそこまでショックが尾を引くことはなかった。あぁできないのか、しょーがねえって、割と早く諦めついた」
「そっか・・。わたし・・・私ね、子どものことはもう授からなくていいって思ってる。悲しいけど諦めはついた。でも、天野くんと一緒に仕事できなくなることがすごく・・・それ以上に悲しい」
「織江」
「・・・怖いよ、天野くん。あなたを・・あなたと離れること・・」

・・・ずっと思ってたこの気持ちは、パートナーである天野くんにはもちろん、誰にも言わないでおこうと決めていたのに。
ううん、誰にも言えない、ましてや天野くん本人には絶対言っちゃいけないと思っていたのに。
つい本音を出して泣く私を、彼はうんざりして引くどころか、そっと抱きしめてくれた。