今のところ、私がガンだと知っているのは、岡部編集長と天野くんだけだ。
でも、私が入院することを「エブリクラブ」編集部のみんなに岡部編集長が知らせてから2週間と3日の間、社で顔を合わせると、必ず誰かが憐れみの眼差しで私を見ているような気がする。
それに苛立ちを感じる時があるし、何より、天野くんの私に接する態度が、微妙に変わったことに腹が立つ。

あぁ、こいつガンなんだ。
もうすぐ死ぬかもしれないんだ。
かわいそうに・・・。

きっと天野くんは、そんな風に思っているんだろう。
私のことを、壊れ物か、はれ物であるかのように扱って、同情している。
そう。彼は私の状況に同情している。
それがすごく腹立たしい。
だって・・・それはイコール、彼はもう、私のことを女として見ることはないということだから。
一気に寿命が縮まった私はもう、彼の恋愛対象にはなることはないんだ。絶対に。

私は、うつろな視線で正面のテレビ画面を見た。