帰り道は無言だった。
死を身近に感じている今、私には軽い冗談が言えるような余裕なんてなかったし、岡部編集長もそんな雰囲気を察してくれたと思う。あえて一人で考える時間を私にくれた。
でも、私が住んでいるマンションまで送ってくれた岡部編集長は、私と一緒に一旦タクシーから降りると、エントランスの前で、私の二の腕にそっと手を置いた。
そして私の目を見ながら、「大丈夫よ」と言ってくれた。

「仕事のことも気になるよね。正直、笹川ちゃんがしばらく抜けることは私も辛い。でもね、笹川ちゃんがいない間、みんなでカバーする。だから笹川ちゃんはみんなを信じて。まずは手術と治療に専念しようね」
「・・・はぃ・・・」
「笹川ちゃんが戻って来るのをみんなで待ってる」