笹に願いを

「なるほど・・。山下さんちの場合、目につくものの数だけじゃなくて、ストック自体少なかったよな」
「そうだね」

その点は私もすぐ気がついたので、山下夫人に聞いてみたところ、「3年前に亡くなった母が反面教師になったんです」という答えが返ってきた。

3年前に亡くなった山下夫人のお母さんは、いわゆる「物が捨てられない・片づけられない人」だった。
お父さんはそれより前に亡くなっていた事もあり、遺品の整理は、一人娘の山下さんがすることになったそうだ。
しかし、それが完全に終わるまで、1年を要した。

『1年“も”ですよ。私にとっては1年なんて長すぎました。小さな子を抱えて、大小さまざまなたくさんの物を一つ一つチェックしては、いる・いらないって。両親がまだ結婚する前、父が母に宛てたラブレターが出てきたときは、ちょっとジーンと来たけど・・・もうあんな作業はこりごりです。二度としたくない。だから自分の子どもたちには絶対させたくないって強く思いました』

そう言って、お母さんを懐かしむように微笑んだ山下さんは、さらにこう続けた。

『生きていく上で必要なものって、実はそんなにないんですよ。服でも日用品のストックでも、何でも。それを亡くなった母から教えてもらったような気がします』