家の近くにあるカフェ「Hola(オラ)」のカプチーノは、味覚麻痺になっても美味しいと感じた唯一の飲物だった。
波の音、浜辺を散歩する私たち。

私のそばには、いつもあなたがいてくれた・・・。

私の目には、もう何も見えてない。
彼の手を握り返す力も、もう残ってない。
何も匂わない。何も感じない。
痛みも、温もりも、涙も。
何も聞こえない。
彼の・・私を呼ぶ義彦の声も。
規則的な呼吸音も。
ということは・・・あぁ、そっか。
これ、夢じゃなくて。私、死んだんだ・・・。

やっぱり、義彦に言えなかった・・・最期に言いたかった、あの言葉・・・よかった・・・書いて・・・・・・。



・・・2018年、7月20日。午前11時34分。
最後の入院から3週間と2日。
「天野織江」として生きた私は、ここで人生の幕を閉じた。
享年、37。
この世で生きた私の日数、13832日―――。