笹に願いを

同棲に留まらずに結婚して良かったと思ったもう一つの点は、私の病状や治療方針について、主治医の須藤先生と話をするとき、義彦も同席ができること。
須藤先生は、私たちの関係を知っていたので、同棲中のときも、彼が同席することを許可してくれていた。
でもそれはたぶん、私に身近な家族が一人もいなかったからだと思う。
だから、私の上司であり、母親のように慕っている岡部編集長も、同席許可を得ていた(編集長は最初から)。
しかし、私が最初の入院をしたときや、投薬治療を始める前の話し合いのとき、彼は同席していない。
あの時の私たちは、恋人になりたてで、婚約もしてなければ、家族でもなかったし。
そのこともあって、彼は私と結婚することを密かに考えていたようだ。
私経由ではなく、私と一緒に先生の説明を聞いて、共に考えて決断を下す。
彼はそうしたいと思っているし、私は彼にそうしてほしい。知っててほしい。
だって私たち、二人一緒にガンと闘っているんだから。

最期のそのときはいつ来るのか・・・分からない。
でも私には、最期の瞬間を頼る人がいる。
最期の瞬間まで夫の義彦に頼っていいという気持ちの余裕が少しでもあれば、私は強くなれる気がする。