夏蝉の鳴く頃



20//年 夏

ミィーーンミィンミィーーーン…


「……あっつ」


いよいよ本格的な夏になってきた。

一度外に出ると肌が焼けてしまいそうになる。


「っ、やば。遅刻しそう」


昨日で高校は夏休みを迎えたのだが、

テストで赤点をいくつもとってしまった

私にはこれからあと2週間も学校がある。


時計の針は午前8時22分。

補習が始まるまであと8分。


さすがに初日から遅刻するのは

気が引けるため、私は走り出した。


汗がじんわりと私を濡らしてゆく。


「はっ、はぁ、、」


ふと隣を通りすぎた公園を見ると、

小学生の男の子たちが元気に蝉取りをしている。


(元気だなぁ…)


なんてすこし感慨深く思った時であった。


『っ!!』


「い、痛…」


私はぶつかったものに

覆い被さるように転んだ。


ほのかに匂うシトラスの香り。

汗と汗が絡まってゆくのに

なぜかすこし高揚を感じた。


「…大丈夫?」


そう言った私の下にあるものを

見たとき、

私はただ、ただ

惹かれた。