「…分かりました、お母様…よろしいですか?」
「陛下がそう仰るなら…」
お母様とレオンさんが部屋から出ていった。
二人が出ていった後も、アルティラ陛下は何も話さない。
でも…静寂が居心地良いと感じた。
「…結婚をしたくないのは、私が怖いからか?」
「えっ?…怖い?」
アルティラ陛下が言うことが理解できなかった。
怖いとはどういう意味?
「私の事は聴いたことがないのか?」
「聴いたことはありますが、アルティラ陛下はそこまで冷酷そうには感じなかったので…」
私は思ったことを口にした。
するとアルティラ陛下は少し驚いたような表情をした。
「そうか、怖くないか…ならすぐに結婚はしなくて良いが婚約はしてもらう」
「婚約…ですか?」
確かに婚約を結べばお互いを知る時間が出来る…、もしかして…私…言質取られたの…!?
「それなら文句はないだろう?」
アルティラ陛下は少し甘さを含んだ微笑を浮かべた。
その甘さの中に猛毒が潜んでいる事を知っていながら、私は…。
「…はい、それなら文句はありません」
承諾をしてしまった…。
狂気の王に気に入られた私はもがけばもがくほど絡み付く糸に捕らえられてしまった。
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