そして、体が誰かに抱えあげられる。 煙で見えないけれど、この腕の優しさは、カイのものだとすぐに分かった。 その体に身を任せると、あるはずの無い睡魔が襲ってきて、私は意識を手放したのだった。 *** 夢を見ているのだろうか。 フワフワと海の中を漂うかのような感覚の中に、私はいる。 ーカチッ、ゴーン、ゴーンッ この音は、私が目覚めた時にも聞こえた...。 秒針が時を刻み、お腹に響く鐘の音が、私の初めて聞いた音だった。