《短編》時計仕掛けのカトレイヤ



「おい、聞いて……」


カイが何かを言いかけたその瞬間、目の前をピンク色の花びらが過ぎった。

それに目を奪われて顔をあげれば、坂を上がった先に桃色の花をつけた大きな木があるのに気づく。


すごいっ、もっと近くに行きたい。

そう思ったら、いても立ってもいられずに、駆け出した。


「あ、おいカトレイヤ!!」


カイの静止も聞かずに、私はただ1点を目指して走る。


「はぁっ、はぁっ」


そして、息を切らせながらたどり着いた場所は……。


「わぁっ……」


そこは、楽園だった。
ヒラヒラと舞うピンク色の花びらが舞う世界。

ここだけ、レンガのあの世界とは別世界みたい。