(仮題)魔女のいるファンタジー

 何ということはない、手の指くらいの厚さのタイルだ。

 メールのとおりに、ひっくり返して填めてみる。

 カチ、という妙な手応えが返ってきた。
 続けてミシ、と何かが歪むような音がして。

 タイルのあったトイレの壁が、一気に真下へとずれて消失した。

「うおおおお!?」

 僕は雄叫びを上げながら後退して、トイレから飛び出した。

「大体なあ、用を足す時はトイレの扉を閉めて──」などと言いながら扉の前まで来ていたアノンとぶつかった。

「痛っ、何しやが──」
 言いかけ、開け放たれた扉からトイレの様子を見て、アノンが硬直した。

「──凄ェな。隠し通路ってやつか?」

 アノンの言うとおり。
 消失したトイレの壁の向こうには、相当年期が入っていそうな石組みの通路が、緩い傾斜で奥へと続いていた。