(仮題)魔女のいるファンタジー

 ぐう、っと。
 僕はパソコン画面を見つめたまま、思わずうめいた。

 初めの一文は別の意味でうめきたくなるが──魔鏡さん、本当に僕のことをお見通しらしい。
 こんな文面を見せられては、僕には選択肢は一つしかない。

 冗談めかした文章に挟まれた、いつになく真剣な文字の群はいかにも狡猾だった。

 普段はヘラヘラしている奴が、一瞬見せた真剣な顔。
 あるいはいつも強気な少女が、ふとした瞬間見せた涙。

 そんな破壊力で、魔鏡さんのメールは頑なな僕の心を突き崩す。
 友情なんて言葉をさりげなくちらつかせてあるあたりがまた巧妙だ。

 何よりタイトルが狡い。
 どんなに孤高を気取ってみても、僕はどこかで誰かに必要とされたいと願っていたのだろう。

 そんな僕の胸の内を全て計算ずくの、まさに魔女の如き殺し文句の数々だった。