「もう出てこなくていいから、あたしを中に入れろ!」

 がんがんどかどか。

「今すぐここを開けねーと、爆破して侵攻するぞ! いいんだな!」

 こいつなら本気でやりかねない。

 ダン、と音を立てて、僕は乱暴に部屋の扉を開け放った。

「お、自分から開けるなんて珍しいな」
 開いたドアの向こうには、目を丸くしている銀髪の少女が一人。

「うるさい、入るなら早く入れ、アノン」
 僕は綺麗な金色の瞳の少女にそう言った。

 アノン。
 大公の娘で、貴族のお姫さまで、僕と同じ十五歳で、僕の婚約者。

 この三年間で、唯一僕の部屋に立ち入ってる少女だ。