(仮題)魔女のいるファンタジー

「それにしても、どうしたのかナ、我らが姫は」

 腕にした時計を見て、魔鏡さんが首を傾げた。
 女の人がするには明らかにゴツいデザインの腕時計だ。

「もうとっくに九時は過ぎてるけどねい」
「都合が悪くなったんでしょうか」

「うーん、だったら良いんだけどねえ」

 心配だ。
 あんなメールを送ってきただけに、彼女の身に何か起きたのではないだろうか。

「実は早く来てて、もう帰ってしまったなんてことはないでしょうか」
「ないね」

 魔鏡さんは即答した。

「姫からのメールを受信してから、ずっとこの場所はチェックしてたし」

「ってアナタ、どんだけ暇人ですか!?」
「あっはっは。ホラ、ネットに繋がれた囚人?」
「いやいや、そういう問題ですか」

 魔鏡さんは、つと笑いを消した。
「んん──まあね」
 サングラスの奧の目が、ひた、と僕を見据える。