「おい、あれ見ろよ」

 トニーが歩道橋から下を指差す。

 話がそれたとほっとしたのもつかの間、またジョーイの心臓はドクッと大きく膨れ上がり、びっくりして目を見開いた。

 キノだった。

 歩道橋下に向かって、大型犬と一緒にこちら側に歩いてくる。

(うわぁ、ほんとに見つけちまった)

 歩道橋真下にさしかかり見えなくなると、二人は反対側の欄干へ素早く走りより、またキノの様子を上から覗き込んだ。

 ジョーイは棒立ちになり、歩いているキノの姿をじっと観察するように見ていた。

 キノはピンクのフード付きのパーカーを着てジーンズを穿いている。
 あれから無事に戻ってきて服を着替えていた。

「あいつ、ここに住んでたのか。でもあの犬なんで漢字がついた垂れ幕のようなものを、背中に背負って歩いてるんだ」

 トニーは漢字があまり得意ではなかったので、読めなかったが、そこには”訓練中”と書かれた服を着て、バーの付いたハーネスを体に装着させたラブラドールレトリバーが、キノに連れられて歩いていた。

「あれ、もしかして盲導犬じゃないか?」

 ジョーイも不思議そうに答える。

 時々立ち止まったり、座ったり、キノの様子を伺いながら動いている様子は、盲導犬として使命を果たしているように見えた。

 二人は暫くキノと犬の様子を上から眺めていた。