シアーズは窓際の教師用に用意されたデスクの上に、軽く尻を当てるように腰を落ち着けた。

 ドアを閉めた後、ジョーイはシアーズに近づくが、少し距離を空けて突っ立った。

 窓から差しこんだ明るい光のせいで、逆光し、シアーズは黒い影のようになっていた。

「(さて、何から話していいものやら)」

 シアーズはもったいぶる様で、またじらしているようにも思えた。

 だが、こんな日が来るとは思わなかったのだろう。

 それは観念したように、諦めの吐息を吐いていた。

「(俺も何から聞いていいのか分からない。俺は何をまず知るべきなんだ?
 そして先生は一体何を知っているというんだ?)」

「(そうだな。まずは君の父親の事だな)」

 やはり、全ての元凶がそこにあるというべき、ジョーイの父親の事は、はずす事ができないようだった。

「(お前の父、ロバートは、立派な科学者だとまず言っておこう。そして研究熱心であり、努力家でもあった。そのお陰で遺伝学では誰もが成し遂げられなかったことをやり通した)」

「(それが遺伝子操作ということなのか)」