「(誤魔化さなくてもいいです。ある程度のことは分かりました。俺の父親が関与して、遺伝子操作をしてること。完璧な人間を作り出そうとしていることも。俺の周りでFBIが付きまとって、俺にも回りくどく教えてくれました)」

 シアーズは黙り込む。慎重に言葉を選んでいた。
 だが腕時計を見れば、それを口に出す時間がない。

「(ジョーイ、できたら放課後に話さないか)」

「(その時、何もかも話してくれるということですか?)」

「(そうだな、できる限りのことは……)」

 そういい残し、シアーズは踵を返した。

 背広に身を包んだシアーズの背中が、ジョーイの目に映る。

 一瞬、どこかで見たような既視感に捉われた。

 今迄、シアーズをまともに見たことがなかったが、そこには自分の普段のイメージとは違う何かを見たような気になった。