ノアは嫌味な笑みを浮かべ、ジョーイに冷たく当たる。

「ああそうだ。しかし、キノの兄として育ち一緒に住んでいるが、血は繋がってないということも伝えておこう」

「えっ? 血は繋がってない?」

「いずれ私達は結婚することになっていてね、申し訳ないがキノには金輪際近づかないでくれるかい?」

「ちょ、ちょっと待って下さい。それってどういうことですか」

「君には関係ないってことだ」

 先ほどまで恋だの、青春だの現を抜かしていた気分が一度に吹き飛び、突然の悪役の登場に、ジョーイは困惑した。

 ノアはジョーイがどう思おうとお構いなしに、無視をして踵を返した。

 ノアとキノは生活を共にしてきたので兄妹という立場は強い方だった。

 この場合、兄と名乗っても全く罪はない。

 そして血は繋がってないことを強調し、婚約者だと仄めかしたのは、ただジョーイを牽制しただけだった。

 大げさに言った方が、効果が高い。

 意地悪く言うことで、キノにも思い知らせる意図ももちろんあった。

 そんな事情など全く知らないジョーイは一人取り残され、ショックでその場に立ち竦む。

 だが訳の分からないこの状況に納得できなかった。

「すみません。直接キノと話をさせて下さい」

 ノアを追いかけジョーイは食い下がった。
 ノアは立ち止まり冷徹にあしらった。

「キノのことは忘れたまえ。どうせ敵わぬ恋だ。忘れるなら早い方が傷も浅い」
「だから、キノと話がしたいんです」
「君もしつこいな」

 ジョーイは腹を立てノアを睨む。

 ノアを無視して突然走り出し、キノを追いかけた。

「ジョーイ、やめるんだ!」