「そういえば、昨日、豆腐のこと言ってただろ。あれから考えたんだけど、豆腐料理屋のレストランを思い出したんだ。そこ豆腐のフルコースのような料理が出るんだって。今度行きたいな」
「豆腐料理のレストラン?」

 そういえば大豆のこともうやむやになっていた。
 息もつかないまま、物事が流れていくこの非日常におかれ、ジョーイはかき乱される。
 それらは何かで繋がっているならば、その根っこの一つを知ることで全ての謎が解けそうなのに、どんどんと訳のわからない事が降りかかる。

 一つ一つ繋げ、その根源を突き止めようとしていた時、トニーの電話の件の事も思い出した。
 駅のホームでつい立ち聞きしてしまったトニーの会話。
 あの時トニーもおかしなことを言っていた。

『別に不審な動きはありません』

 まるでトニーも、何かが起こることを前提に、様子を探っているような言い草だった。

 ジョーイは眉を顰めてトニーを見つめた。

「なんだよ。眞子ちゃんを勝手に呼んだことまだ怒ってるのか? 勝手なことをしてすまなかった。これからは気をつけるから、いい加減機嫌直してくれ」
「そんなことはもういい。それよりトニーは何か俺に隠し事とかしてないか?」

 ふとトニーの箸が止まる。

「なんだよ、急に。そりゃ俺だって人には言えない話くらいはあるぞ。でもいちいちそんなことまでお前に言わないといけないのか?」
「例えばだ、俺に関することで何か隠してるということだ」
「はあ? ジョーイに関すること? 何があるんだよ。あっ、黙ってお前の部屋入ったことか?」
「いつ入ったんだよ」
「今日。眞子ちゃんに自分の部屋見せて、ついでにジョーイの部屋も見せた」
「おい、なんでそんな勝手なことするんだ」
「なんか見られてまずいものでもあったか? もしかしていやらしい本隠してたとか? それなら俺にも貸してくれ」
「いい加減にしろ。もういいよ。飯もいらね」