「だけど、なぜあそこにリルが居たんだ?」

 今度はジョーイが疑問に思った。

「えっ? そ、それは、私も夜桜祭りを見に来たの。そしたらジョーイが変な人たちに連れて行かれるところを見て、それで後をついつけてしまって、そしたら殴られてたからびっくりした」

「そっか、リルも夜桜祭りに来ていたのか。なあ、リルはキノって知らないか?」

 もしかしたらキノも来てるんじゃないかとつい名前が出てしまった。

「キノ? ううん、知らない」

「あれ? 今度は違う女の子の名前? ジョーイ、一体どうしたの。この間のカウンセリングからなんか様子が違うわよ」

 早川真須美の目が光る。

 早川真須美を誤魔化せないのは分かっていたが、リルにこの状況を知られるには抵抗があった。

「カウンセリング?」

 案の定リルは不思議そうにその言葉を繰り返した。

「ああ、ここは俺がカウンセリングに通ってるところだ。この人がその先生ってな訳」
 ジョーイは観念したかのようにそのことだけは伝える。

「ジョーイ、何か問題抱えているの?」
「まあな」

 ジョーイは言いにくそうに相槌を交わすも、リルはすぐにその気持ちを察知した。

「そう。ジョーイも悩みがあるんだ。でも、安心して、私、口堅いから。カウンセリングに通っているって誰にも言わない」

 早川真須美は、気を遣うリルの様子を見て微笑まずにはいられなかった。

「ねぇ、リルちゃん。この堅物ジョーイとはどうやって知り合ったの?」
「えっ? どうやってって言われても……」

 リルは首を傾げた。

「あのね、ジョーイは滅多に女の子に声を掛けるような子じゃないの。このお色気たっぷりの私ですら無視されるくらいなんだから」
「先生、一体何が言いたいんだ」

 余計なことを言わないでくれとばかりに、ジョーイは顔を顰める。

「だから、なんだかジョーイが普通の高校生に見えてきたから、その原因を知りたくなったの」
「それはまた今度のカウンセリングで話すよ。それでいいだろ」

 リルの前では、これ以上自分の素性を明かすのは嫌で、慌てて答えていた。