ジョーイが目覚めれば、そこは見慣れた部屋だった。
 いつものカウンセリングで使う簡易ベッドの上に寝かされ、その側でリルが目を赤くして様子を窺っていた。

「やっと気がついたみたいね、ジョーイ。だけど一体何があったの?」

 ジョーイは起き上がろうとするが、リルが押さえて、首を横に振る。
 寝転がったまま、ジョーイは早川真須美の質問に答えた。

「それが俺にもさっぱりわからない。ただ変なチンピラとぶつかってしまって、謝っても許してもらえず、それで反感を買って殴られてしまった」

「そう、それは災難だったわね。でもどうしてジョーイは今日ここにやってきたの?」

「えっ? そ、それは、その桜夜祭りに興味があって」

「ふーん、ジョーイにしては珍しいわね」

 早川真須美はそれ以上は何も言わず、ジョーイの側に寄ると腕を取り脈拍を測った。
 リルはまだ落ち着かず、心配そうにその様子を見ていた。

「えーっと、リルちゃんだったね。ジョーイは大丈夫よ。この程度じゃ死にやしないから、安心して。ジョーイも隅に置けないわね、いつの間にか、こんなかわいい子と知り合いだなんて。てっきり女の子には興味ないかと思ってたわ」
「いえ、リルは、その」

 ジョーイはどう説明していいかわからなかった。

「あの、私はただの後輩なだけです」

 リルはもじもじとうつむき加減で答えていた。
 その様子を早川真須美は優しく微笑んで見ていた。