「すみません」
「ん? すみませんだと」

 丁寧に謝ったつもりだったが、その男はジョーイの顔を見るなり気に入らない態度を露骨に示す。

「おい、兄ちゃん、なかなかムカつく顔してるじゃないか。今ちょっとむしゃくしゃしてたんだよ、いい機会だ、おい、顔貸せ」

 あまりにも理不尽だった。
 却って呆気に取られているうち、あれよあれよと、その男の仲間と思われる数人の男達に挟まれていた。

「ちょっと、ちゃんと謝ったじゃないですか」

 そう言っても許してもらえず、二人の男に腕をつかまれ、全く人気のない路地に連れ込まれてしまった。
 そして胸を強く押されて、ジョーイはよろめいた。

 かつてない危機に遭遇し、ジョーイはごくりと唾を飲み込む。
 じりじりと後ずさりをするも、誰かがすでに後ろに立っていた。

「よぉ、兄ちゃん、歯食いしばれ。一発殴ったら許してやる」

 態度はでかいが、その男は小柄だった。

 殴られてもたかが知れてると覚悟を決め、ジョーイは歯を食いしばった。

 だが男が殴ろうと勢いつけて拳を飛ばした時、咄嗟の反射神経でジョーイはよけてしまい、男は勢い余って転倒してしまった。

 またそれが更に怒りを買ってしまい、男の怒りは頂点に達してしまった。

 男の合図と共に周りの仲間がジョーイを押さえ込む。
 ジョーイはほんのちょっとぶつかっただけで、サンドバックのような殴りを腹に数回お見舞いされてしまった。

「ごほっ」

 ジョーイは抵抗できないまま苦しみもがく。
 そこに誰かがかなきり声を上げながら駆け込んできた。

「いやー! 誰か、誰か助けて!」

 その悲痛な叫び声が功を奏し、チンピラたちは素早く逃げていった。
 ジョーイは体をくの字に曲げ、よろめきながら叫び声の主を見つめた。

「ど、どうしてここに君が……」

 腹を抱えながら地面に膝をつく。
 意識が朦朧としていく中で、ジョーイは再びビー玉が転がる光景を思い出していた。