「えっ? こ、これを俺が落とした?」
「はい、ここに名前が書かれた紙が一緒に挟まれていたんです。もしかしてジョーイのかなって思って」

 キノが情報誌の中を開くと、紙が確かに挟まれていた。
 走り書きされたような筆記体でJoey Kiryuと記されている。
 紛れもなく自分の名前だった。

 その開いたページには、油性らしき黒いペンで何重にも丸で囲んだ印も入っていた。
 見覚えのある風景。
 自分がカウンセリングで通うクリニックがあるビルの写真が掲載されていた。

「これを一体どこで拾ったんだい?」

「あの、その、日の出公園という場所で、昨晩犬の散歩をしてた時、偶然この雑誌が落ちていて、ゴミ箱に捨てようと持ち上げたらその紙が出てきたんです。それで雑誌をぺらぺらめくっていたら、ページに印がついてたので、一応確認した方がいいと思ってその……」

 日の出公園は駅前から東へ向かったところに位置する、街の大きな広場になってるところだった。
 朝日が昇るのが見られるのでそんな名前がつけられている。
 犬の散歩をしていたというのは、あの例の盲導犬のことなんだろう。

 しかしジョーイは前日にそこへは行ってない。
 だが、この雑誌が何を意味しているのか心当たりはあった。

 これがギーからの連絡なのだろうか。
 それしか考えられないが、なぜキノがメッセンジャーの役になっているのかがわからない。