「あのさ、私、子供の時、自分がちやほやされて当たり前だって思ってたの。みんなかわいいっていつも言ってくれたし、自分でも愛されてるって子供心ながら自覚していた。

 だけど両親が離婚して、私は経済的な理由から父親に引き取られ、母はその後仕事先で知り合ったアメリカ人に見初められて、あっという間に再婚。そして渡米して異父姉妹ができた。

 私は母親に会う権利があったし、父もそれについては理解があったので、海外で少しだけ母たちと一緒に過ごしたの。英語なんて全然分からなかったけど、いろいろなところに連れてって貰えたし、それなりに楽しかった。

 妹もお姉ちゃんができたって喜んでくれて、懐いてくれたの。妹はハーフで本当にかわいかった。だけど私は嫉妬したの。優しいお父さんとそして私の母にたっぷり愛されてるところを目の当たりにすると耐えられなかった。

 だから妹に覚えたての英語で『I don't like you』なんて言っちゃった。妹はショックだったのか泣きながら家を飛び出してしまって、夕方になっても戻らなくてそれで警察ざたになっちゃった。

 あの時私もことの大きさに気がついて頭が真っ白になっちゃったから、そのときの記憶があやふやなんだけど、とても嫌な思いだけは残ってるんだ。

 その後はいい子になろうって、人を傷つけちゃいけないんだって頑張ってきたんだけど、男の子には好かれても女の子にはいい子ぶってって嫌われることが多かった。

 仲良くしてくれる男の子とちょっと楽しく話したら、すぐに告白してきたり、その男の子を好きな女の子には睨まれるし、本当に最悪。

 そんなトラブルばかり続くから、みんな色眼鏡で私のこと見ちゃって、私は自分の思うままに接しられなかった。

 だけど、ジョーイは違ったの。ジョーイはかっこいいのに、それを鼻にかけない、寄ってくる女の子にも見向きもしない、自分の思うままに生きているって感じがした。

 そんなジョーイに恋をして自分は本当に楽しかったんだ。だから自分も思うままにジョーイに接したかった」

 詩織は詩織なりの悩みを持っていた。
 一度見れば忘れられないくらいの美人。

 しかしそれ故に嫉妬の対象にもなりやすく、そして彼女自身、嫉妬とは何か、身をもって経験している。
 詩織にも詩織なりのコンプレックスがあった。

 ジョーイは一言も発さず最後まで静かに聞いていたが、詩織が静かになった後を見計らって口を開く。