時刻はPM10:00。



途中俺達は青のゼファーを乗り捨て


徒歩で瀧本のマンションへと帰宅した。



二人共部屋に入るなり長い緊張から解き放たれ


お互い別々のソファに身を投げるように横たわる。



店を出てすぐ感じた勝利の余韻とは


一時の気分の高揚が作り上げたモノでしかなかったことを時間の経過とともに知った。



そして気付く。



自分達がしでかしたことの深刻さを。



俺はシュウジの後ろに乗っている間


何度も追っ手が来てはいないかと振り返ったし


バイクを乗り捨てて徒歩でこのマンションにたどり着く間も


見ず知らずの通行人とすれ違う度に顔を伏せた。



《家に帰るまでが遠足です》とはよく言ったものだ。



伝わるだろうかこの緊張感。



敵の情報網がどれだけのものかは知らないが


既にこのマンションすら割れているのではないかと思えるほどの脅迫観念に襲われる。







そう…



全てはこの対面するソファに横たわる男のせい。



偽関西人で

気分屋で

ハッタリ野郎で

ネジが何本かブッ飛んでて

おまけについさっきドMであることをぶっちゃけたこの男…




飯塚シュウジのせいである。



そして俺は世界一不幸な共犯者。



いや…



むしろ被害者。