夜。



街行く人々は


どいつもこいつも能面みたいな顔して携帯片手にスタスタ歩いてる。


その一角では女は派手な洋服を着て自分の体に値段をつけ


男は白い粉が入った袋をポケットに忍ばせて、信号待ちの乗用車に片っ端から声をかける。


うだつの上がらないサラリーマンは酒という力を借りて上司の悪口を高らかに叫び


住む場所を失った初老の男達は公園のベンチを我が家とする。




美しい国日本。




笑える冗談だよ総理大臣。


俺には欲望と欺瞞と失望に満ちたこの国が地獄とさほど変わらないんじゃないかと思う。



地獄?



いや…


別にあの世があるなんて思っちゃいないけどさ。


ただのイメージ。


死んだら人は無となる。


残るのは残された人々の記憶の中。


だけどそれもやがて無となる。






…バカ。


感傷に浸るな俺。


そんなことどうだっていいだろ。


たまに宗教チックに考えるのが俺の悪い癖だ。