お兄ちゃん、だめ... そんなとこ…かじっちゃだめ…

「な…渚かぁ……」

顔を上げた先にいたのは渚1人だった。

私は安堵のため息をつく。

「なによぅー。渚だったら不満な訳ぇ?でも、どうして隼先輩の部屋から出てきたのー?」

「ちょ、声大きいから。とりあえず私の部屋行こ」

渚の腕をつかんで、私の部屋に連れ込む。

とりあえずベッドに座らせて、不思議そうな顔をしてる渚に尋ねた。

「で、渚はどうして二階に上がってきたの?」

「えー。隼先輩に、ちょっと様子見てきてって頼まれたからだよぉ?」

「そう。…実は私、寝ようとしたんだけど寝れなくて、お兄ちゃんの部屋から何か本借りようとしてたの」

「あ、そうなんだぁ。いいのなかったのぉ?」

手ぶらで出てきた私に無邪気に首を傾げる渚。

「そう。なんか難しい本ばっかりで。あ、お兄ちゃんに言ったら馬鹿にされちゃうからこのことは内緒ね?」

「あはっ。はぁい」

…これでお兄ちゃんにバレたりしないよね。

力が抜けて、私はベッドに横になって天井を見上げた。

「未央、大丈夫~?」

「…大丈夫ではないかな」

「えー。おとなしく寝ときなよぉ!」

……おとなしく寝れる訳ないでしょ。

恐怖から高鳴る鼓動を感じながら、私は曖昧に笑った。