お兄ちゃん、だめ... そんなとこ…かじっちゃだめ…

「お、お兄ちゃん?」


まな板を色づけた赤色を見つめたままお兄ちゃんは動かない。


「お兄ちゃ」


「…だ」


「え?」



「キレイ、だ」



ゾクリとした。

とろけたような甘い口調と焦点があっていない瞳に。


「な、なに言って…」

そのままの瞳で口元に笑みを浮かべたままお兄ちゃんがゆっくり近づく。


怖い。 こ わ い。



包丁を持ったまま立ち竦む私の瞳に映るのはー




本当に私のお兄ちゃん?