「泣いてなんかないもん…」


「嘘言ってもその顔見れば分かるっての。
目超腫れてるよ?」



これで隠しな、って伊達メガネを貸してくれる。


「ありがと…」


なんて言うか、千恵子にはかなわない。




「それでさ、どーすんの?
西口くんのこと?」


「どうって…別に…」


「別にって何よ?
他の女に取られていいわけ?」

気が強い千恵子は少しイライラした口調になる。

頬杖をついていない方の手で
机をトントンと鳴らしている。


「取られるも何も…
あたしと章太朗はそーいうんじゃ…」


急に肌寒くなって引っ張りだしてきたセーターの袖口に、あたしの言葉は吸い込まれた。