「絵が変わったと先生はおっしゃいましたが、俺自身、あまり意識したわけではないんです」
ひざの上で手を組みながら、とつとつと話し出す。
「描いていたらいつの間にかあの魚がキャンバスにいて、俺もびっくりしたんですよ」
「無意識だった……ということだね?」
「はい。でも、理由は分かっているんです。俺の絵を変えた原因、というのかな」
「……それがなにか、聞いてもいいかな?」
それこそが、今日彼を呼び出した本題。
あの頑なだった心に起こった変化が、一体どういうものなのか。
二ノ宮くんは一度目を伏せた。
そして再び顔を上げて、晴れ晴れとした表情で答えた。
「人を、好きになりました」
「…………そうか。人を好きになった……。そうだったか」
人を好きになった。
なんでもないような言葉だけれど、二ノ宮くんの口からそんな言葉がこぼれたと思うと、感激してしまう。
哀しみがあふれてしまいそうな彼の心を救ってくれる誰かが現れたのだ。
これを喜ばずに何を喜べというのだろう。
年をとると涙腺がゆるくなっていけない。
涙がにじんでしまった目元を隠すように、視線を床に逃がす。
ぼやける自分の足が見えた。
ひざの上で手を組みながら、とつとつと話し出す。
「描いていたらいつの間にかあの魚がキャンバスにいて、俺もびっくりしたんですよ」
「無意識だった……ということだね?」
「はい。でも、理由は分かっているんです。俺の絵を変えた原因、というのかな」
「……それがなにか、聞いてもいいかな?」
それこそが、今日彼を呼び出した本題。
あの頑なだった心に起こった変化が、一体どういうものなのか。
二ノ宮くんは一度目を伏せた。
そして再び顔を上げて、晴れ晴れとした表情で答えた。
「人を、好きになりました」
「…………そうか。人を好きになった……。そうだったか」
人を好きになった。
なんでもないような言葉だけれど、二ノ宮くんの口からそんな言葉がこぼれたと思うと、感激してしまう。
哀しみがあふれてしまいそうな彼の心を救ってくれる誰かが現れたのだ。
これを喜ばずに何を喜べというのだろう。
年をとると涙腺がゆるくなっていけない。
涙がにじんでしまった目元を隠すように、視線を床に逃がす。
ぼやける自分の足が見えた。

