――トルソーのこころを持つ教え子がいた。





寒さも身にしみるようになった十一月の下旬。


教え子が私の自宅を訪れた。


「こんにちは、先生」


「ああ、よく来たね」


私は、皆藤慈雲(じうん)。


とある美術大学で教授をしている。


年はもう七十を射的距離に入れた老いぼれだ。


訪れてくれたのは、去年まで美大にいた二ノ宮海音くん。


私の教え子の中では一番の『天才』で、絵の世界では『期待の新人』などと呼ばれている。


確かに、彼の作品は突出している。


技術はもちろんだが、彼の描く絵は力がある。


見るものを惹きつけてやまない。


引き込まれそうになる魅力が、二ノ宮くんの絵にはあった。