・・・・・・・女は頭からではなく、口から生まれてくるものだ・・・。


 佐倉由紀は、クラスの女子たちの噂話を遠巻きに聞きながら、昔、親父がそんなコトを話していたなぁ~・・・とぼんやりと思い出していた。


 名前に似合わず、部活焼けした褐色の肌に、ツンツン頭の短い髪。


 よくも悪くも、健全なスポーツ少年である。


 もっとも・・・彼の所属は運動部の中でも文科系といわれて名高い弓道部だが・・・。


「よぉ、何しけた顔してるんだ?」


 連続行方不明事件の影響で部活がなくなり、午前授業となった気だるい放課後。


 お金もないし、余った時間をどのように使おうか・・・と考えていたら、机越しに声をかけられた。


 顔を上げると、そこにいるのはいつもの顔が・・・。


 ・・・と言ったら失礼か。


 彼女の名前は、向日葵夢。


 コレでも、クラスの中ではマドンナ的な存在である。


 栗色の髪を肩まで伸ばし、大きな瞳に小さな鼻。


 夏服のセーラー服に、ちょっと細工したスカートは女子特有の技術なのだろうが、見えそうで見えないラインをギリギリで保っている。


 ・・・・・もっとも、どうせ中を見たところでスパッツを履いてます・・・ってオチは言わなくても分かっているが・・・。