君の隣






そんな行き場のない気持ちで歌い続けていたがむしゃらだった私はずっとたった一つの地点で立ち止まったまま。




止まった歯車を動かそうとしても重くて動かせない。



鉛みたいな人生を歩いていた。



歩いていたのかな。



立ち止まっていたのかもしれないな(笑)なんて今なら笑って言えるけど、当時の私からしたら全然笑い事じゃなかった。



そんな時に今のバンドのリーダーから声がかかった。



はじめは私の路上での歌をただ偶然聞いてくれただけで。



そこから私の物語は動き始めたんだ。



「お前の歌声、いいんだけどな。」



「え?」



「もっと良くなる。
俺らと組めばもっといい歌にして届けられる。
よくわからないけど、すごく気持ちが入ってて、自然と心に入ってくる。
本当に中毒性がある歌声。
俺らと組まない?」



「組む?」


「一緒に音楽をやろう。」




“一緒に…”




誰かと一緒にやるなんて考えてもいなかった。



だって自分の歌は皆への歌なんかじゃないから。




皆が思ってるようなきれいな歌なんかじゃないよ。




欲望に満ち溢れた、私の歌は私の欲望が詰まった歌なんだ。




私の歌はたった一人にしか向けられていないんだ…。