「俺は先に帰ってるから。
何かあったら連絡して。」
コーヒーを一気に飲み干したリーダーは軽く机にお金を置いた。
頑張れよ、っといってそそくさと帰っていく。
気を使ってなのかもしれない。
私一人でもう一度練習場へと向かう。
練習場に向かう途中。
色々なことを考えた。
憐の顔を見て、いきなり泣いてしまったら、どうしよう…。
落ち着いて話せるかな。
リーダーはきっとわかっていてくれた。
きっと今の私なら落ち着いて憐と話せるっと…。
さっきはにぎわっていて、活気に満ちていた練習場もさっきの様子とはうってくぁって。
静かな空間が流れていた。
「まだかな…。」
外にあるベンチに腰をかけ、私はポケットから携帯を取り出した。
憐がくるのをただひたすら待っている。
「まだかな…」
携帯を開くと、そこにはバンドメンバーとの写真がある。
わたしは絶対に何があってもここに戻る。
何があっても自分を失ったりなんてしないよ。
携帯には16:00の文字。
もうこんな時間か。
辺りはもうすっかりと寒くなって、秋の香りがする。
落ち葉がちらほらと落ちていて、紅葉ももう終わりか。
なんだかあのときみたいだ…。
あの時、憐と言葉のない別れをしたときみたいな…。

