黄昏の千日紅






「……そう」



微かに震える声で、母が答えた。




私は体制を変える。
仰向けになり、あの時と同じ状況を思い浮かべながら、夢で見たことを話す。





「……ハチがね、多分。光だったの」




「…光?」




私はゆっくりと頷き、母を見る。
母はハンカチで涙を拭いながら、真っ赤な目を真っ直ぐこちらに向ける。





「眠ってる間、ずっと真っ暗な螺旋階段にいたの。…下には簡単に降りて行けるのに、光の射している上には全然進めないの」




私は白く汚れのない天井を見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
その間、母が私の言葉に小さく頷きながら、話を聴いてくれているのが視界に入った。




「下は、この世界じゃないことが分かった。あっちに行ってしまったら、私はもう戻れないんだって分かってた。だけど…だけど、降りて行けばもしかしたら逢えるんじゃないかって」



私は向こうにいきたいと思った。
いかなければならないと思った。

この世界にさよならしようと思った。




「…ハチに?」




「うん」