深夜。

御影城跡のある山を登る一人の僧侶の姿があった。

袈裟姿の、紛れもない僧侶。

しかしその体格は僧侶というよりは、武道家のそれだった。

隆起した筋肉は袈裟で包み込むにはあまりに窮屈そうである。

見上げるばかりの大男。

無論、この男はただの僧侶ではなかった。

退魔僧。

悪霊、怨霊、妖怪、魔物。

そういった魔性の類を退治、調伏するのを生業とする、仏門の裏の顔。

仏敵を排除する密僧であった。