「じゃねー」
「また明日」

「あ、天ちゃん!またね!」
「天ちゃん、また明日ー」

「うん、ばいばい!」



夕日が照らす校舎の玄関は、文化部でいっぱい。
吹奏楽部、書道部、そして私が所属している美術部。
文化部は3つしか存在しないというのに、吹奏楽部が人気で吹奏楽部だけでも30人以上いる。





「天ー、黙って先に行かないでよー」


階段から駆け下りてくるのは、一応友達の上原晃。


「ごめん、もう晃が先に行ってるのかと思ってたから」

「ねね、今日も一緒に待っててくれない?」


晃にはサッカー部の彼氏がいる。
運動部は文化部よりも下校時間が遅いから彼氏と帰る晃には約20分付き合わされる。


「おねがーい」

「…いいよっ」


心では全く別の事を考えながら満面の笑みで返す。
晃は怒ったり落ち込むとすごく面倒臭いから、なるべくそういうのは回避したい。



「でねー、この前私、目が大きくて可愛いよねって言われたのー!」

晃の自慢話は始まると止まらないどころか、段々酷くなっていく。


「晃、目が大きいもんね」

「あ!来た〜ぁ」


晃に負けないくらいのナルシスト、お似合いだよ。


「もう帰っていいよ〜」

「うん、ばいばいっ」


語尾に星が付きそうな位の笑顔で一つのカップルを見送る。

学校で先輩からも後輩からも、同級生からも人気の私はどんな時でも笑顔を忘れずに、心に思ってもないことを言う。
いわゆる裏表が激しいタイプだ。

もちろん学校でも家でも愚痴をこぼさない私は周囲から『いい人』とか『人気の可愛い人』なんて思われている。
自分で言うけどそれなりに顔も可愛いし、勉学もそこそこだ。

どんなに仲が良い友達が出来ても絶対に心の底の黒は出さない。


「あれ、天じゃん。よっ」


泥と汗のにおい。
私は何故か野球部から人気らしい。


「お疲れ。今日も泥塗れだね」

「小雨だったしな!」

「風邪引かないようにねー」

「多分」


同級生の野球部数人と帰り道が同じの為、途中まで一緒に帰る事が多い。


「ポスター描けたか?」

「色塗りがもう少しで終わるよ」

「何のポスターなんだよ」

「平和」

「…俺でも描けるわ」

「ふふっ。そうかもねー」