恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

小柄でかわいらしい野村加奈だから津島のツボに入ったのか。
本当ならあの夜、スマホで撮影して津島に制裁を加えて別れさせようと企てたのに。

あの男のせいで計画がすべて台無しになった。
しかも無理やりキスするなんで、どういうことなんだろう。

津島が出ていって数時間がすぎる。
そろそろ寝る支度をしなくてはと、重い腰をあげ、浴室へシャワーを浴びにいく。

すべて脱ぎ去り、鏡に自分の間抜けな姿をさらしてみる。
鏡でみても野村加奈のほうがかわいいに決まっている。

まぶたが腫れぼったく、目が充血していた。
津島のために泣いたのか。涙がもったいないはずなのに、どうして泣く必要があるんだ。

かさついた唇に目をやる。
あのメガネの男のことを思い起こしていた。

わたしよりも背が10センチ、いやそれ以上の背の高さだった。
さんざん津島とは寝ているはずなのに、津島は付き合いはじめも、付き合っているときもキスをしてくれなかった。

ずっと待っていたのに。
それなのに、あの男にキスを奪われるなんて。

考えれば考えるほど、あのときの熱烈なキスの味を思い出してしまう。
あんなに気が遠くなるような、甘くしびれるものだったのか。

体の奥底が急に熱を帯び始めた。
いかん、いかん、変な男なのにキスで体が感じてしまうなんて。

がしがしと頭も体も入念に洗い、少し熱いシャワーを浴びた。
汚れとともに、今日のいやなことはすべて排水溝へ流れていってしまえばいい。

最後に冷たいシャワーを頭から浴びた。
これで少しは冷静になれ、と自分に叱咤した。