恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

久々に戻る『カントク』の部屋。
重い扉を開けて中に入ると、作業している班が挨拶をしてくれる。
この人たちのおかげで会社の中が回っている。
『カントク』として派遣されたのに何もできずに終わってしまったことが心残りだ。
いっそのこと、作業班として採用してくれたらよかったのに。

特別班の部屋へ向かおうとしたとき、少しだけ扉があいていた。
中から、あおいさんの声がしている。

「ずいぶんとおもってらっしゃるんですね」

「べ、別にいいだろう」

「かわいらしいですわ」

「俺をからかうなよ、あおい」

あおいさんがうふふ、と笑っていると、大上部長は顔を赤らめ、下を向いている。
あおいさんにだけはああいう顔をみせるんだ。

急にムカムカして大きな音を立ててドアをノックした。

「失礼します」

「おはよう」

と、さっきみせていた顔ではなく、真顔になって大上部長が接した。

「萌香ちゃん、おはよう。あら、今日は顔色が冴えませんことね」

会社の制服ではなく、水色の上質な布でつくられたワンピースを着こなしたあおいさんがわたしの顔を伺っていた。
制服も似合ったけれど、わたしよりも背格好がモデル並みに美しいあおいさんだからこそ特別に仕立てた洋服が似合っている。
見目麗しい女性だからきっと大上部長もあおいさんの魅力にとりつかれた一人なのだろうか。

「いえ、大丈夫です」

「どうした。何をそんなにひねくれている?」

大上部長がめずらしくつかつかとわたしの前に来てじっと冷たい目で見下ろしている。

「別にいいじゃないですか。仕事に来たんですから」

「そうだな。こちらに来ない分、たっぷり仕事用意してあるから」

といって、近くにあった棚から取り出した交通費や交際費などの経理関係の書類が入った段ボール箱をテーブルの上に置いた。

「今から俺とあおいは外に出る」

「は、はい」

森崎さんと安田さんの件があったから、あやしい見方をしてしまった自分がいた。

「あら、萌香ちゃん、寂しいそうよ」

「そんなこと、ありません」

必死にごまかしていると、

「終わったら帰っていい」

と言い残してあおいさんとともにわたしだけ残して出て行ってしまった。