恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

「わたし、ただ自分の役割の仕事しかしてなかったですけど、よかったんでしょうか」

「大丈夫。しっかり『カントク』としての役割を得ていると思うよ。それに所属してる部署のこと、同僚には話さなかったんでしょ?」

「ええ。さすがに足を引っ張っちゃまずいかなって」

大上部長はじめいろんな人たちが準備してきたことをぶち壊すわけにはいかない。
かといって、どう行動すればいいのかもよくわからない。
自分の与えられた仕事をこなすだけで必死だった。

「最初はそういうものさ。業務内容によって実力を発揮できたりするよ」

「そうでしょうか。横尾さんのほうがすごかったですよ」

「ちょっと強引だったけどね」

そういって照れながら横尾さんは頭をかいている。

「でも取引してたあの会社はもともと取引をやめる予定だったんだ」

「立て直しをはかるためにわざわざあの部署へ出向いたわけなんですね」

「うん。森崎、安田には気の毒だがあの二人のおかげで会社に利益をもたらしてくれたことも事実だけどな」

もともと頑固な性格だった二人だからこそ、ちょっと強引気味だったけれど誘導に成功したわけか。

「ずっと赤字になるよりも新しく商品企画をして構わないと上からの命令でね」

「上っていうことは、まだ『カントク』に上がいるってことですか?」

「まあ、俺たちはただの会社のなかの人間だから。権限は会社に委ねている」

「『カントク』内も管理されているだなんて」

『カントク』の上ということは社長はじめ役員の誰かが指示しているんだろうな。
ぼんやり上を向いていると、横尾さんが、

「それより、大上部長のこと、見直した?」

と、ニヤついた顔をしてわたしをみている。

「見直すもなにも、関係ないですから」

「だいぶ『カントク』に染まった感じがするけど」

「ちゃんと仕事をこなしたら『カントク』から卒業しますから」

「椎名さんらしいな」

といって横尾さんはまた笑った。