恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

会議室から戻ると、フロアには我々の部署の人間しか残っていなかった。
各々のデスクに戻ると、皆一様に机の上のものを片付けはじめた。

気がつけば『カントク』のメンバーはダンボールに荷物をつめている。
大上部長にさりげなく聞く。

「もうおしまいなんですか」

「ここの仕事は今日で終わりだ」

と、大上部長はダンボールに書類をつめながら答えた。

「まだたりないことがあると思うんですが」

「お前の所属はどこだ」

と、大上部長は手をとめて、わたしをにらんだ。

「『カントク』ですけど……」

「そうだ。俺たちの仕事は見守る仕事だ」

「……ですけど」

もう少しここでの仕事をやってみたかったっていう気持ちが大きい。

「あとは残った仲間で仕事をする。そのために俺たちがレールを敷いただけだ」

「……わかりました」

「物分かりのいい部下を持って嬉しいぞ。椎名萌香」

と、片付けを終えて、『カントク』に戻るといって大上部長はフロアを去った。

ひとり、机の上の荷物を片付けながら考える。
これから大泉さんがこの課を引っ張っていくのか。
面白い企画とか商品開発をやったりして活躍していくんだ。

それに比べてわたしは素性を隠しながら仕事を続けていくっていうのか。

ちょっぴり寂しい気持ちがしたけれど、大上部長のいう通り、わたしの所属は『カントク』だ。

次の職場へ配属されるためには『カントク』の仕事をきっちりやろう。

使えなかった企画書を眺め、いらない資料とともにシュレッダーにかけた。