恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

わたし、椎名萌香は気がつけば27歳と三十路に手が届いている女だ。

中学高校と女子校だったわたしは、男というものを知らなかった。
知らなさすぎといったほうがいいのかもしれない。

小説だったり少女漫画、女の子向け雑誌なんかでみた男性という肖像を眺めたっきり。

男といって思い浮かべるのは父親ぐらい。
いっつも休みの日はたいていソファに寝転がってテレビでゴルフをみていたり、たるんだおなかを見せ付けたり、わたしがいるのにパンツに手をつっこんでお尻を掻いているし。
こんなだらけた男とよく母は結婚したのかと落胆することもあったけれど、結婚しなくちゃわたしは生まれてないわけだからしかたのないことなのかと諦める。

大学も女子大にしようかと思ったけれど、さすがに行きたかった大学が共学だった。

今考えてみたら、あの頃は相当の男子アレルギーだったのかもしれない。
チャラチャラしている男をみては気づけば説教をしていた。

「こいつ何いってんだよ」と冷めた目で男からみられてから次第と男と付き合うことに対して消極的になった。

それでも大学の友人だったり中学高校からの付き合いの子たちが男とつきあい、幸せそうな目で萌香なら必ずいい男がくるよ、と社交辞令ばりにいってくるから、しかたなくその言葉を受け入れた。

それでも大学は勉強も楽しかったし、女の友達もたくさんできたから彼氏がいなくても生きていけると思っていた。
同じ大学に通うちやほやされているかわいい女子をみるたびに、勉強もしてないくせに男に媚びちゃってるちゃらちゃらした女とは違うんだという自信をつけていった。