恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

しばらくわたしはあおいさんからもらったここでの仕事をもらって進めていたところ、フロアに入ってきたスーツの男性に目を奪われる。
部署に近づいてきた男性の背格好と、こんばんは、という声に聞き覚えがある。

「はじめまして。シーエヌリテーリング、営業の横尾です」

髪の毛をオールバックにし、姿勢を正し、上質なスーツに身を包んだ横尾さんだった。
いつも警備員の服を着ている横尾さんだけれど、やっぱり社長さんだけあって落ち着いた雰囲気が身体中から出ている。
ちなみにシーエヌリテーリングは総合商社で篠崎グループとの取引が多い得意先のひとつだ。
横尾さんはわたしに気づき、目配せした。

「ここではなんですから。ウチの部署のものも同席してもかまいませんか?」

と、大上部長が尋ねると、

「かまいませんよ」

横尾さんが了承すると、あおいさんが借りてきた別室の応接室の鍵を持って一緒に移動することになった。
横尾さんと対になるように大上部長、森崎さん、安田さんが座り、その近くにわたしやあおいさん、鈴井さん、戸塚さんが座った。

「森崎さんから新しい商品の取引を提案されましたが」

と、横尾さんが企画書を大上部長へみせた。
というか、知らない間に横尾さんにコンタクトをとっていたなんて。

「残念ですが、取引は停止させていただきたい」

横尾さんの発言に、会議室の空気が一気に沈む。
それよりももっと深刻なのは、森崎さんと安田さんが顔を青ざめていた。