恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

「椎名サン、ごめんなさい」

エレベーターホールでエレベーターを待っているとき、大泉さんがぺこりと頭をさげる。
大上部長から見積もり書を預からせてくれと命令が下ったので作成したすべてを提出し、帰ることになった。

「どうしたの? 別に怒ってないよ」

「あのまま仕事やってたら大変になることわからなくて」

エレベーターがきたので大泉さんと一緒に乗り込んだ。

エレベーターの入り口に大泉さんが立ち、奥にわたしが続いた。
大泉さんの横顔は少しやつれていた。

素直でいい子でやってきたんだろう。
前回所属していた部署でもなんでも仕事をするといって自分のキャパがわからないまま、オーバーワークをしているのに気づかないできていたのかもしれない。

昔のわたしに似ている。
少しずつ力を抜いて仕事ができるようになったのはつい最近のことだけれど、やっぱり自分を必要としていると俄然張り切ってしまうのは仕方ない。
でも周りが見ないふりをしてるだけじゃだめだし、最終的に社員をダメにしてしまう。
手分けすれば済むのであれば手助けしなくては。
会社のためであるし、大切な会社のなかの仲間なのだから。

「どうしよう。大上部長に悪いことしちゃいました」

大泉さんが犬が飼い主に怒られてしょんぼりしたような、かなしそうな顔をみせている。

「大丈夫よ。だって安田さんから言われてやったことなんだし」

「みんなの企画を差し置いてやってしまいました」

「未然に防げたからよかったのよ」

「そうですけど、でも」

「大泉さんは悪くない。しっかり仕事してるから」

「そうですかね。椎名さんにそういってもらえるだけで明日から頑張れそうです」

そういって大泉さんは目を輝かせ、息巻いていた。

「頑張らなくていいんだから。あとは部長の判断を待とう。そして自分のできる仕事をやろう」

「はい!」

大泉さんにいったつもりが、自分自身に言い聞かせていた。
エレベーターを先に降りた大泉さんの横顔が少しだけ明るくみえた。