恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

「仕事ができるやつに任せればいいんだから」

「そうですよね。ではあとよろしく」

といって森崎さんと安田さんは、さっさと帰ってしまった。

見積もり書の数字をみて疑問が増える。
席を立つと、書類がしまわれた棚にいって見積もり書の背表紙の入ったバインダーを取り出す。
自分の席に座り、バインダーをめくり、過去の見積もり書を確認する。
以前から贔屓にしている会社には高く見積もり、数社の新規取引会社に関して安くしたらここの会社の儲けがなくなるじゃない。

今までどういう仕事の仕方をしてきたんだろう。
それよりどういう営業の仕方をしてごまかすように仕事をこなしてきたんだろう。

「お疲れ様。まだ残ってたんだ」

と、代表会議に出席していた大上部長が帰ってきた。
残って作業していたわたしたちの顔をみて、わたしのデスクの上に並べられた見積もり書を一部拾い上げた。

「お疲れ様です。見積もり書や注文書の作成をしていたら時間になってしまって」

「この見積もりってみてないけど、どういうこと」

「あ、あたしがやりました」

ガタンと音を立てて大泉さんが青ざめた表情を浮かべながら立ち上がった。

「大泉さん、君が?」

「安田さんがあたしの商品企画に対して興味を持ってくれて。で、この見積もり書なんかと一緒にあたしの推した企画を出すっていってくれて、つい」

「そういうことだったか」

「部長が承認していないのにもかかわらず勝手に取引先へ提出しようとしていたんです」

何も言えなくなった大泉さんに代わってわたしが説明した。

「あの二人がね」

見積もり書をデスクに返し、自分の席に座った大上部長は『カントク』でみせる不敵な笑みが一瞬みられた。

「あと一息っていうところかな」

大上部長の意味深な言葉がひっかかる。

「ええ。あと少しってところまできているのかもしれませんね」

と、あおいさんが付け加える。
そろそろか、とため息とともに大上部長が独り言をつぶやいた。