恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

新商品も決まらないまま、日々の仕事をするだけで1週間が経過する。
相変わらず森崎さんと安田さんとの溝はうまらない。

この部署に配属されて一ヶ月が経過した日、大上部長は社内の代表会議に出席のため、席をはずした。
珍しく森崎さんと安田さんが席に残って仕事をしている。
定時を過ぎ、わたしとあおいさんが帰ろうとしたとき、大泉さんはデスクから動こうとしなかった。

「大泉さん、定時すぎてるけど」

「あの、仕事があるので、先に帰ってください」

いつもはハキハキとした口調の大泉さんが今日は歯切れの悪い言い方だった。

「どうしてあなたが仕事をしなくちゃいけないの? 仕事はみんなのものでしょ。背負う必要はないよ」

「自分がやるっていったから」

「そうやって仕事を押し付けられたら自分の仕事ができなくなっちゃうよ」

「でも……これ明日までに仕上げないと」

「誰に頼まれたの?」

「……安田さんです」

何の仕事をしているか気になったので、みせてもらう。
数社の雑貨屋などの見積もりと注文書だ。
ご丁寧に担当者欄には森崎さんがサインしたとみられる。
もちろん、大上部長の名前は記載されていない。

「これ、大上部長に承認は得たものなの?」

「安田さんからいい、と言われていたんで」

「そんな勝手なことを」

「安田さん!」

怒りの矛先を安田さんに向ける。
安田さんは小首を傾げ、目を細めていた。

「自分でできるって彼女がいったのよ。だから任せた。それだけ」

「これ、大上部長に承認とったんですか?」

「今までの仕事の方針よ。別にとらなくても赤字にならなければいいんだから」

「だからって、勝手に進めることはないじゃないですか」

「私のやりかたにいちいち口挟まないでくれる? そんなにやり方変えたいだなんて、あんた、部長に言われたの?」

「そうじゃないですけど」

「椎名さん、手分けしてやりましょう。いいですよね、安田さん」

あおいさんがエキサイトしてきたわたしをなだめるかのように話しかける。
そんな掛け合いを退屈そうにあくびをしながら森崎さんがみていた。