恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜

次に大泉さんが立ち上がり、張り切ってみんなに資料を配る。

「あ、あの、雑貨なんですが、北欧の雑貨はどうでしょう」

確かに他のお店では北欧雑貨を取り入れ、女性のハートをキャッチしているのを目にしている。
資料を読むと、他社が取り扱っていない色彩とキャラクターの食器だったり文房具だったりと楽しませてくれそうなものが紙面上に踊っている。

「そんなものは売れないんじゃないんですか。今更北欧のものなんか扱ったところで目新しいことじゃない」

とピシャリと森崎さんは言って机の上に資料を放り投げた。
大泉さんは小さくなって自分の席にすわった。

次はあおいさんだ。

「アメリカ直輸入の食材なんですが、知り合いのひとからどうかと提案がありまして」

アメリカではポピュラーな食材なのだろうか、日本ではみたことのないものばかりだった。
おいしそうな食材がずらりと色とりどり並んでいる。
きっと何十回もアメリカへ直接いっているあおいさんだからこその目利きなのかもしれない。

「これは以前に似たようなものを取り扱いましたけれど、売行きが芳しくないのでやめました」

安田さんが机の上にのせた資料を爪ではじきながらきっぱりと否定した。

戸塚さん、鈴井さんはそれぞれ男性が好みそうな男性用化粧品と、老若男女楽しめる創作雑貨を提案したが、やはり森崎さんと安田さんが首を縦にふらなかった。

「みなさんそれぞれ売れそうなものを持ってきているみたいですけどね」

と、大上部長がやんわりとした口調でフォローを入れる。
それをきいた森崎さんは目を釣り上げ、顔を赤くしていた。

「今のものが売れてるんだからそれでいいんじゃないんですか」

「わたしもそう思いますけど」

付け足すように安田さんが冷たく言い放つ。

「これじゃあ先に進みたくても進めませんね」

優しい口調で大上部長がやれやれと肩をおとしていると、

「こんなくだらないことに時間をかける必要はないと先ほど申したはずですが」

と、たたみかけるように森崎さんが話す。

「お言葉ですが、森崎さん」

大上部長の声が少しだけ荒くなった。